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スミルノワのジゼル

オリガ・スミルノワの一番最初の記憶はロシアのTV番組「Bolshoi Ballet」。

当時はワガノワを首席で卒業したらしい完璧な踊りと、審査員のコメントににこりともしない硬い表情が印象的でした。

それから12年、ボリショイの看板ダンサー時代を経てオランダ国立バレエに移籍し、研鑽を積んできたスミルノワのジゼルを映画館で観てきました。本当に良かったです。

1幕の最後の迫真の演技は磨きに磨かれていましたし、2幕ではアルブレヒトへの無言の愛(1幕ももちろん無言ですが)が全身から発せられ感動的でした。

アルブレヒトを踊ったヤコポ・ティッシも理想的な王子役ダンサー。客席から大きな拍手をもらっていて、移籍数ヶ月にしてすでに観客に支持されているのがよく分かります。

このふたりでバヤデールも観てみたいと思いました。

オーケストラも劇場つきらしい、ダンサーとの入念なリハーサルぶりが伺えて素晴らしかったです。

演出面では1幕の最後が新鮮な終わり方ですが、考えてみるとこのほうが2幕へスムーズにつながりますね。

先日見たパリオペラ座の白鳥2幕の最後でもそうですが、王子が走って舞台から退場する必要はないのだなあと思いました。

オペラではカルメンやスカルピアが死なない演出もあるくらいですし、時代により少しずつ変わっていくのもまた楽しいですね。

夜桜

桜舞う、たっぷりしたボリュームのパールネックレス。


青い空を背景にした満開の桜も美しいですが、夜にぼんやりとあかるむような桜の花もまた特別な雰囲気。

そんな夜桜のイメージで撮ってみた一枚です。


今年の春の花はみな開花がゆっくりで、桜もまだ寒風の過ぎるのを待っているようです。

散歩に出ると満開の沈丁花が香る、春分の日でした。

香港にて

素材探しに訪れたついでに、香港のレコールで開催中の特別展「An Eye for Beauty, the Illuminata Jewelry Collection」を見てきました。

或る香港のマダムがコレクションした、製作時期も場所もさまざまなハイジュエリーとともに、同じ人物が求めて愛用した明代の家具や服が展示され、血の通った空間になっていました。

これはマダムがシャンハイタンで誂えた服に、同じ中華様式の翡翠のアクセサリーを組み合わせた展示。 他には、ガリアーノのドレスに19世紀のカラーストーンジュエリーの組み合わせもありました。

展示品の中で一番気に入ったのはどんぐりのティアラ。3つに分解してそれぞれをブローチとして身につけることも出来ます。

じっくり眺めて可愛らしさを味わっていると、またどんぐりを描きたくなってきました。

レコールの入っている建物は2019年にできたK11 MUSEA。建物から香港島側に出ると遊歩道で水景が楽しめるつくりになっています。

再開発で変貌を続ける街も、人の暮らすエリアを歩いていると、特に商売の場所に必ずあるのは昔ながらのこんなもの。

この頃お気に入りの小さなお店の、キャッシャー脇にある立派なお壇は、どんなに忙しくてもきれいに保って新鮮な果物や明かりを絶やさないよう心配られているのがひと目で分かります。

漢字の「美」にはもともと豊かさを願う意味がありますから、この小さな設えは「美」のひとつのかたちとも言えそうです。

鳥文斎栄之展

新聞の紹介記事を見て興味をもった「鳥文斎栄之(ちょうぶんさい えいし)展」を見に、千葉市美術館に出かけました。

このところデザインの取材のために平安時代に没入する時間が多かったのですが、この日はすっかり江戸時代の雰囲気に浸ることに。

鳥文斎栄之は江戸時代、旗本つまり武家から転向した異色の画家です。

将軍家に直接仕える官僚の「旗本」にはたくさんの職種があり、鳥文斎栄之 は江戸城本丸で将軍の身の回りの物事を司る「小納戸」に属していました。

ん?「小納戸」って何する人ぞ?と調べた職種を挙げていくと、分かりやすいところでは「御膳番」「御髪月代」「御庭方」「御馬方」「御鷹方」などなど。で、鳥文斎栄之はそのうちの「絵具方」で狩野派の画家から絵も学んでいました。

人脈や環境に恵まれた画家としてキャリアをスタートした彼は、上流階級の日常を知る者ならではの描写力と洗練された画風、前職でのノウハウを活かした上質な画材をつかい、順調に実績を積み上げていきます。

展示会場には国内外所蔵の多くの版画と肉筆画がありますが、構図も何もかもがすっきり整理され一貫してモダンな雰囲気。

うんとたくさんの作品が海外へ流出したそうですが、今回里帰りした画は誰がみても品を感じるような静かな力があります。

そしていずれも色使いが美しく、展示後半の肉筆画は特に良い画材がたっぷり使われ、殊に赤は目が覚めるような力強さでした。


展示会は3月3日まで。一点一点に丁寧な解説があり充実した内容のため、興味のある方は滞在時間を2~3時間ほど見積もっておくことをお勧めします。


<アテナリ POP UP SHOP>
会期:2024年3月6日(水)~12日(火)
会場:日本橋三越本館 1F アクセサリーイベントスペース

パリオペラ座来日公演白鳥の巻

パリ・オペラ座バレエ団の来日公演。

心もとない記憶によると、ヌレエフ版の白鳥をライブで見たのは初めてかも。

初めてパリで見たバレエはたまたま公演中だった白鳥の湖、オデットはピエトラガラだったのを覚えていますがヌレエフ版ではなかったような。


今回の来日公演で一番見たかったのは若きエトワールのギョーム・ディオップ。

成人するかしないかの年齢の王子、ヌレエフ版は家庭教師(ロットバルト)の心理的な影響下にある設定なので、年齢なりの困惑や無関心や内向性が自然に感じられてとても新鮮でした。

踊りのほうは美しいとしかいいようがなく、これから長く長く続くキャリアでどこまで伸びてゆくのか、楽しみでしかないです。


一昨年マイヤリンクを見て気に入ったブルーエン・バッティストーニも、2つの役にキャストされていて、ラッキー。

他の配役でも、注目していた伸び盛りの若いダンサーを見ることができて良かったです。


そして、ディオップ君目当てのためオデット/オディールは誰であっても見に行くことに決めていましたが、コラサンテはさすがの貫禄。

間違っても「頑張り」や「100%」を感じさせずエレガントにまとめるのがパリ・オペラ座バレエの真髄ですが、まさにそれを体現していました。

技術だけでなく、4幕の永遠の別れを惜しむマイムでは涙が出ました。このあたりはベテランの表現力の勝ち。

公演は大入りです。

「お客さんぎゅっと詰まった文字が美き」

<アテナリ POP UP SHOP>
会期:2024年3月6日(水)~12日(火)
会場:日本橋三越本館 1F アクセサリーイベントスペース