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カザールコレクションのこと

先日サントリー美術館で楽しんだカザールコレクションについて。


ウーゴ・アルフォンソ・カザールは1912年に商社員として大阪に赴任し、そのまま二度の大戦を経て日本で没したイタリア系スイス人。

日本ではほとんどを神戸で暮らし、蒔絵作品を主とする工芸品を収集しながら日本の漆芸品を研究し、その分野では欧米向けの出版物もあるそうです。

江戸から明治の蒔絵の優品がこぞって海外へ流出してしまった中、カザールコレクションが珍しく国内で所蔵されている経緯にはドラマがあります。

日本の第二次世界大戦参戦が確実になった頃。

収集品を米国へ逃がすため神戸港で船積み準備を終えた途端に日米開戦してしまい出国叶わず、収集品はそのまま親交のあった大阪市立美術館に保管されて終戦を迎え、カザール没後に正式に譲渡されたそう。

大阪市立美術館が所蔵する4000点余のカザール・コレクションのうち半数は蒔絵を多く含む装身具が占めるそうです。


トップ写真は80年代に出版されたカザールコレクションの図録で、櫛かんざしに加え印籠や根付や煙草入も「装身具」としてまとめられています。

途方もないコストをかけて各々の趣味に合わせて作られた品々が、市中で身につけられている豊かな社会を想像して、眺めていると幸せになります。