大好きなプッチーニの『トスカ』、3月13日神奈川県民ホールにて。
フィレンツェ歌劇場(Teatro del Maggio Musicale Fiorentino)の日本公演初日です。
ズービン・メータ指揮のオーケストラから音が発せられた瞬間、あまりに素晴らしくてため息が出てしまいました。
前々日から大変な状況で、会場に出向くのをためらった方も少なからずいらっしゃったと思われますが、最初の1小節で「来て良かった」と思った方もまた、少なくなかったはず。
続く撫でるような弦の旋律に、縮こまった肩から力が抜け、身体に音楽がすーっと入ってきます。
この日、悪役スカルピアはルッジェーロ・ライモンディ。
10年ほど前に映画『トスカ』でもスカルピアを演じた彼は、カーテンコールでオーケストラピットからの拍手を一番たくさんもらっていました。大御所です。
トスカで有名なアリアは、追いつめられたトスカが歌う「歌に生き、恋に生き(Vissi d’arte, vissi d’amore)」ですが、私の一番好きなのは1幕の終わり、賛美歌を背負ったスカルピアの「Va, Tosca!」。
聖と俗とが重なりあい、スケール感があって、背筋がぞくぞくします。
演出がきめ細やかなお陰で、スカルピアの嫌らしさが強調され(笑)、逆にトスカ役のアディーナ・ニテスクは演技力不足が目についた格好となりました。
・・・とにかく。
美しいものはいつだって素晴らしく、見る/聴く人を解放し幸せにしてくれます。
素敵な時間をありがとうございました。